「音楽による創造性開発プロジェクト」は、その源流を「くらしに音楽プロジェクト」にしています。この新旧2つの団体の設立趣旨は類似しています。それは、これまでのクラシック音楽の聴き方、楽しみ方、活用の方法を違った角度から変えてみることで、もっと多くの人たちの生活や生きていく能力を豊かにし、あるいは音楽って楽しいものだとイメージを改めていただくことを念頭にしています。
そして特に音楽による創造性開発プロジェクトは、くらしに音楽プロジェクトの実践と知見を基に、 より効果的に、子どもから大人まで、創造性を豊かにすることを、音楽などの芸術活用で実現することに主眼を置き、活動展開することと致しました。
さて、この「創造性」とは一体なになのでしょうか?どのように役立つのでしょうか? 「ひとづくり」「ものづくり」「まちづくり」などにおいて、創造性が大切だと言われております。なかには創造都市という考え方も世界には存在します。子どもの成長に、人々の成長において創造性を高めることを期待されますが、そのメカニズムについて明言はされておりません。ただ、創造性の発出の機序、それは「音楽」の活用方法、技法によってカギがあると明かされるときが近づいています。
そのようなわけで、より多くの皆さまと、このカギを開けることに挑みたいと考えておりますので、 どうぞ皆さまのご関心、ご支援を賜れましたら幸いに存じます。
砂田 和道
(マサチューセッツ州ブルックラインにて)
1.設立趣旨
創造性とは、既知の事柄、素材など、それらの組合せの変換や統合をしながら、何らかの新しく価値のあるものを作り出すこと、またはその能力のことをいう。 近年、創造性の必要性は「教育」にとどまらず「まちづくり」から「企業活動」に至るまでの人材育成全般にわたって言及されている。 こういった傾向は、いつの時代においても問われており、実のところ新規性ある課題だとはいえない。 しかしながら、この創造性の開発において、わが国ではメソッドやプログラム、および評価の確立が成されていない状況が続いている。
本団体は、「くらしに音楽プロジェクト」によるこれまでの実践から得た知見を基に、活動を進めることを念頭にしている。 とくに在日アメリカ大使館やアメリカのニューヨーク・フィルハーモニック教育部門とともに「くらしに音楽プロジェクト」が協働で国内に進めてきたArts in EducationやSTEAM教育の実践と普及啓発の取組、 および文化庁事業やラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭における音楽による創造性開発プログラムの取組、 さらに自治体文化政策に関するプログラムと施策に関する評価の取組は、わが国にとって実践的かつ大変有益な先進例として蓄積されている。 そこで本団体は、これら知見を継承しつつ、教育政策や福祉政策に資する分野横断的な総合政策としての文化政策、および企業などの民間活動を対象に、各分野に内在する今日的な課題解決のため、 創造性開発のメソッドと評価を確立させることを基軸にしながら、文化芸術活用による包括的かつ戦略的なプログラムの実施や策定を実践的に展開していくことを目標にしたい。
2.活動内容
本団体は、次にあげる内容を活動していく。
3.求めるべき成果
4.創造性を豊かにするために
前項にて求めるべき成果に触れましたが、創造性開発のメソッドが定着すると、子どもからお年寄りまでの思考に大変良い影響を与えます。 たとえば、観察力を高めるトレーニングでは、音楽活動に必要なデュアル・タスクで情報処理力を鍛えることになり、それは学習者の判断力、多様性、寛容性、想像力、発想力を豊かにします。 そういった諸能力は、幼少期の子ども、学校教育での子ども、企業研修の社会人、さらにお年寄りにも必要な事柄です。 一例をあげると学校教育ではICT活用のGIGAスクールにて、創造性開発の教材と教育メソッドを必要としています。 さらには子育て支援施設から社会人研修を必要とする企業、そして高齢者施設に至るまで、創造性開発の脳トレーニングは必要とされています。
だからこそ本団体は、人材育成プログラムとして音楽や文化芸術による創造性開発プログラムを提唱し、民間や子育て、教育、福祉などの各分野に創造性開発が定着するよう政策的にも提言するため実践と研究を進めたいと考えます。
現代日本の主要な価値観は、未だに数学、英語、理科などの主要教科に基づく偏差値型思考に支配されているようである。製造業を中心とした古典的な工業国家モデルによる経済発展論が前提となっている限り、日本の次なる飛躍は望むべくもない。そこでは、情報マトリクスや知識集約による創造性を重視した、脱工業型経済に向かわざるを得ない必然性への危機意識の欠如や、未来に向けた基盤形成の努力が疎かにされるからである。
企業による工業設備投資の増加、政府による公共土木事業への投資拡大、国全体の工業製品輸出額の増加、国民総消費の拡大、などの伝統的なGDP 思考を離れて、私たちは新しい時代の価値概念に向き合わねばならない。工業設備投資に代置されるべきは企業革新のための知的装備形成に向けた投資であり、公共土木事業への政府投資と同等か、それ以上に緊急的必要性があるのは次世代に向けた公教育投資である。また、工業製品の輸出だけではなく、知的・文化的財の輸出や知的観光振興による外部からの財の導入が重要となる。
国民総消費額の縮小・停滞も、新自由主義的経済政策が非正規労働者を大量化させたことによる必然的な結果である。不完全雇用におかれた世代の貧困化と将来への不安が消費を萎縮させているのであって、買いたいものがなくなってきた、という訳ではない。このような階層の不安を解消し、新たな知的産業を開発、振興し、雇用を拡大していかなくてはならないはずである。
今後はAIやロボットに代用できる機械的作業(RPAなど)ではなく、人と人とのコミュニケーションが重視される職域が重視されていくだろう。個人個人の創造性を重視し、それらの人々同士のコミュニケーションを増幅させていくシステムは、すでに学校や企業組織の枠を超え、ネット社会の中で発達してきている。このような外部社会の趨勢と、現代の学校教育や企業研修の内実が次第に乖離してきていることに、人々は気づき始めてきている。このような時代において、芸術(美術、音楽、演劇、文学、舞踊など)が果たす創造性への多大な役割に、私たちは気づかなくてはならない。古典的な大学教育においても、リベラル・アーツ、特に音楽が重視されてきたことを再認識すべきであろう。
このような時代に、「音楽による創造性開発プロジェクト」は、NPOとしてスタートする。このNPOがめざす創造性開発メソッドは、高齢者・障害者福祉、乳幼児の子育て、小中学校、高校などの学校教育、企業内部研修、地域コミュニティの活性化に至るまでの幅広い応用範囲を持つことを述べておきたい。まさに、V.ペストフが三角形モデルで示した、NPOの社会的貢献の幅を(政府担当公共領域の支援、市場の補完、地域及び家庭への支援)示しているといえるだろう。ついでにいえば、社会変化の予兆をとらえ、それをパイロット的に示し、社会に変革を促していくのもNPOの仕事なのである。
以前、創造性は芸術や文化の分野の中でだけで重要な要素だと考えられていた。しかし現在ではその他に、経済発展や人間発達においても重要な要素だと考えられるようになってきた。このような創造性の意味拡張は、グーグルで「creativity」のヒット数が1990年から20年間の間に3倍に増加した事実などにも現れている。
創造性が重要だと考えられるようになってきた背景には、脱工業化に直面する先進国の次の経済モデルとしての「創造経済」「創造産業」への注目・関心の増大がある。重厚長大型経済から知識集約型経済への転換で最も重要な要素は創造性である。創造性は、一般に考えられているようにアーティストなど特定の人々の専有物ではなく、人は誰でも潜在的に創造性を持っていることが最近の脳科学研究で明らかになりつつある。
近い将来、AIやロボット技術の本格的導入で大量の雇用減少が予測されている。しかしそこにおいても、クリエイティビティは、マネジメント、ホスピタリティとともに人間が担い続けるだろうと言われている。創造経済が本格化するこれからの社会では創造性を養い、それを伸張させていくことが求められる所以である。大量生産時代では、チームプレイによる生産活動が重要だったが、創造経済時代は、優れたアイデアが価値創造の源泉となるため、個人の活動がより重要となる。したがって、個人の創造性を伸ばすための社会システムの組み替えが急務となっている。なかでも、知識詰め込み型の学校教育システムの改革が急がれる。
この文脈において、重要な役割を果たすのが、美術、音楽、演劇といった芸術教育だ。従来これらは、数学、科学、語学などの主要科目の下位に位置する従属的・選択的科目だと考えられ、大学入試科目からも排除されてきた。創造性がアーティストの専売特許だと狭く捉えられていたからである。このような科目ヒエラルヒーを見直し、芸術教育の優先順位を上げなくてはならない。しかし、そこにはアーティストや国民の意識改革も求められる。従来芸術や文化は、高級な知的階層の専有物といった排他的・エリート主義的な見解が支配的で、国民も自分たちと芸術・文化の関係について身近なものと感じることは少なかったが、そのような芸術文化観からの転換が必要である。
かつて芸術の世界は、作品をつくる創作者とその受け手としての受容者にはっきり分離されていた。しかし、この15年間で急速に普及したSNSはこの区分を打ち壊した。ソーシャル・メディアを使えば、誰でも簡単に、動画や楽曲など自分の「作品」を公開できる社会がいきなり実現したからだ。このような状況を反映して、男子中学生のなりたい職業ナンバーワンはユーチューバーとなった(2019年の調査)。
適切な年齢の生徒に適切なメソッドにもとづいた創造性を育むための実践的なワークショップ型の音楽教育を、学校という強固なシステムの内側と外側で行うことは、生徒個人の固有な得意分野を発見し、その才能を磨くことにより、より創造的な人間発達を支援することにつながる。これに貢献するためのささやかな活動として「音楽による創造性開発プロジェクト」はスタートしようとしている。
団体名 | 音楽による創造性開発プロジェクト ※ 英語名:Creativity in Music Project 省略名:CMP | ||||||||||
設立目的 | 本会は、くらしに音楽プロジェクトの知見を継承しつつ、教育政策や福祉政策に資する分野横断的な総合政策としての文化政策、および企業などの民間活動を対象に、各分野に内在する今日的な課題解決のため、創造性開発のメソッドと評価を確立させることを基軸にしながら、文化芸術活用による包括的かつ戦略的なプログラムの実施や策定を実践的に展開していくことを目的にする。 | ||||||||||
事業内容 |
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設立 | 2021年6月1日 | ||||||||||
代表者 | 砂田和道 | ||||||||||
理事 |
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主要取引銀行 | 三菱UFJ銀行 | ||||||||||
問合せ先 | cmproject0601@gmail.com |
くらしに音楽プロジェクトは、アメリカの創造性開発教育を基盤にして国内向けに、研修、シンポジウム、ワークショップの実施をアメリカ大使館の文化戦略の一端を担うかたちで実施してきました。また、その過程において文化庁やラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭の事業で、そのノウハウを日本の状況に変容させながら実施しました。さらに、研究調査などの成果を文化経済学会<日本>、日本文化政策学会、(公社)全国公立文化施設協会にて発表しています。創造性開発教育に関連する実績は下記になります。